本研究室の卒業生である山田恭平さん(現所属: Princeton University)が2023年に執筆した博士論文が、高エネルギー物理学奨励賞に選考されました。
山田さんは本研究室に在籍中、Simons Observatory実験のための装置開発およびPOLARBEAR実験のデータ解析を推進しました。山田さんは低温偏光変調器の構築および性能評価、かに星雲の偏光観測によるaxion-like particles探索について博士論文を執筆し、その独自性が高く評価されました。
受賞を記念し、日本物理学会2025年春季大会にて高エネルギー物理学奨励賞受賞記念講演が行われました。
発表者:山田恭平
講演題目:ミリ波偏光変調器の進展とミリ波偏光振動観測による超軽量暗黒物質の探索
講演番号:20pT3-7
博士論文
受賞理由
本論文は、次世代のミリ波偏光観測装置 Simons Observatory 小口径望遠鏡のためのミリ波偏波変調器の開発、および現在稼働中の POLARBEAR 実験でのミリ波偏光回転観測による超軽量ダークマター探索について記述している。
次世代のミリ波偏光観測においては、宇宙初期に生成された原始重力波を起源とする宇宙背景放射の B モード偏光を検出することが最終的な目標となる。それを実現するうえで重要な課題となっている 1/f ノイズを抑制するために、入射光の偏光を 8Hz で変調することで、検出器の応答の違いによって生じる系統的な不定性を低減する。そのために必要となる低温連続回転半波長板式偏光変調器の開発において、装置のデザイン及び構築、偏光変調器単独の試験環境の構築、性能評価、望遠鏡への統合試験、制御装置及びソフトウェア開発、データ解析ソフトウェア開発を主導し、膨大かつ精密な較正を詳細に実施した結果を克明に記述しており、独自性、貢献度は申し分ない。
また、ダークマター候補として注目されている axion-like particles (ALPs)によって生じる偏光の回転を POLARBEAR 実験において探索することを提案し、データ解析を主導した結果、9.9×10-23 eV から 4.8×10-19 eV の質量領域で、ALP と光子の結合定数に対して天体の偏光観測による最も厳しい上限を与えたことは独創的と言える。
以上により、本論文は高エネルギー物理学奨励賞に相応しいと判断した。(高エネルギー物理学研究者会議ホームページより引用)
関連リンク
高エネルギー物理学奨励賞(https://www.jahep.org/syourei.html)
日本物理学会2025年春季大会(https://onsite.gakkai-web.net/jps/jps_search/2025sp/index.html)